野党時代は猛反対…民主“年寄りいじめ”突然の医療費負担増

厚生労働省は21日までに、70−74歳が病院窓口で支払う負担(現在は原則1割)について、2013年度から段階的に2割に引き上げる方針を固めた。また、同年度に導入予定の新たな高齢者医療制度では、75歳以上の保険料が現在より年間2万2000円増えるという試算も明らかに。野党時代に民主党が掲げた「お年寄りをいじめるな」のコピーがむなしく響く。

 厚労省関係者によると、早ければ13年度に70歳になった人から2割負担となり、対象年齢を毎年引き上げ、5年間で74歳まで広げる。12年度までに70歳になる人は1割負担のままで、現役並みの所得がある人は、現行通り3割負担だ。厚労省で新制度を検討している「高齢者医療制度改革会議」で25日に示される。

 この年代の窓口負担は、小泉政権時代に原則2割と定め08年度からの実施が決まっていたが、自公政権は負担増への反発を避けるため、引き上げを凍結。民主党政権になっても引き継いでいたが、年間2000億円の公費投入が必要なため、凍結解除の方向になった。

 また、75歳以上の約1200万人の平均保険料は、10年後の20年度に年8万5000円と、現在より2万2000円増える見通しだ。

 どちらも財源論から考えれば必要な措置といえなくもない。ただ、民主党は75歳以上の後期高齢者医療制度廃止など高齢者への配慮を打ち出し、自公政権を攻撃する形で政権交代を果たしただけに、「二枚舌」「ウソつき」批判は避けられない。

 多くの民主党議員は野党時代、自らのポスターなどに「お年寄りをいじめるな」と書いて後期高齢者医療制度を攻撃。実際、08年に他の野党と共同で提出した後期高齢者医療制度廃止法案では、70歳以上の負担を「1割」と明示。細川律夫厚労相も08年6月3日に発行した支援者向けの会報で「負担を軽減させることがこの法案の目的だ」と記している。

 こうした攻撃が功を奏し、福田内閣など自民党政権は支持率を大きく下げていったのは記憶に新しいところ。

 今やムダ撲滅や予算組み替えによる財源捻出を断念して消費税増税に傾くなど、野党時代に国民と約束したことを平気で修正するのは民主党の“お家芸”というイメージすら固まりつつある。

 政治評論家の森田実氏は「野党時代の公約は、そのまま実行すれば国民を不幸にする、国益に反するというものならば変えてもいいが、その場合でも代表や政策責任者の辞職など、責任を伴う。高齢者医療制度は、高齢者の支持を得る大きな約束で、違えていい性質のものではない。検討中で撤回するならいいが、実現させるなら内閣総辞職に値する話だ」と切り捨てた。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101021/plt1010211609002-n1.htm