【激震2010 民主党政権下の日本】原口大臣の公務員改革に異議あり 人事権は財務省が握ったままで優良企業並みの給与水準を維持

 原口一博総務相渡辺喜美みんなの党代表(元行革担当相)が15日のテレビ番組で、公務員制度改革について議論した。一見すると、民主党みんなの党も、公務員制度改革を主張していて、似ているようだが、本当だろうか。

 先の国会で、政府・民主党は公務員改革法案を国会に提出した。一方、みんなの党は、自民党と共同で対案としての法律案を同じ国会に提出した。両案は審議されたが歩み寄りはなかった。三宅雪子民主党議員の転倒ばかりが話題になる中、民主党強行採決した。ということは、民主党みんなの党の公務員改革の中身は、まったく違うということだ。

 原口総務相は「政治主導」というが、そのキモである民主党内閣人事局は人事関係機能を完備していない。一方、みんなの党の案では、内閣人事局の中に人事院総務省財務省の人事関係部局を統合して移管する。政府全体の人事機能を官邸に集中させるのは当然であるが、これら3つの人事関係部局に対して出向という形でポストを握り人を送り、事実上政府の人事機能を牛耳っている財務省にとって都合が悪い。官邸に機能集中させると3ポストとも財務省が握れなくなるだろう。

 また、人事院勧告について、原口総務相は「尊重し、そのとおり実施する」と役人の主張どおりにいう。地方でも人事院勧告と同じ制度があるが、勧告どおりでないところもある。実は人事院は公務員労働組合とけっこう親密だ。そしてマスコミも人事官ポストをもらってきたから、人事院を批判できない。

 人事院は、民間企業(50人以上の規模)との比較で勧告を行うというが、経営破綻した企業の給与のゼロはカウントされない。公務員だけは、いかに経営悪化しても、優良企業での給与水準を確保するというのはおかしい。

 民主党は「現役出向」を天下りの抜け穴に使った。これは、渡辺代表が行革担当相のときの天下り規制に対抗するために当時から役人の間でいわれていた裏技だ。現役出向は30歳代の若手課長補佐クラスのために作ったもので、渡辺時代は封印されてきたが、民主党になったら、それを拡大し部長クラスの管理職までというのだから、偽装天下りといわざるをえない。

 原口総務相は「生首を切れないから仕方ない」と言った。給料半減で役所に残すという選択肢もあるが、それでは不都合なのか。民主党の政策では、マニフェストに掲げた公務員総人件費2割カットも危うい。公務員人件費をカットすると景気に悪影響という公務員エゴも聞こえるが、景気対策はしっかりしたマクロ経済政策でやるのが筋だ。

(嘉悦大教授、元内閣参事官高橋洋一

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20100819/dms1008191558016-n2.htm