現役官僚が大量出向、衝撃のウラ…天下り禁止で“就活”?

菅直人政権の正念場となる臨時国会が30日、召集された。が、霞が関の官僚の話題の中心は、もっぱら同じ7月末に予定されている人事異動の行方。「今年は独立行政法人などへの出向が大幅に増えそうだ」(ある官庁幹部)といい、なかにはそろそろ退官の時期を迎えるのに、なぜか出向となる官僚も少なくないようだ。

 現役官僚を大量出向へといざなうのは、7月16日に閣議決定された改正国家公務員退職手当法施行令。

 この法律は、独立行政法人などの役員に現役官僚が出向することを事実上“公認”するもので、関係業界や団体に原則2年間出向することで、公務員が定年まで勤務できる環境を整備するというのが建前だ。

 実際は、「官僚の天下り斡旋禁止に伴う人事の滞留を回避するため、事前に出向を通じて官僚の人柄を知ってもらい、時機をみて業界側から自発的に受け入れの声を上げてもらう」(霞が関関係者)のが目的。そのため事前の「就活のススメ」ではないかとも指摘されている。

 官民の人材交流の促進が叫ばれて久しいが、現役官僚の出向は細々と行われていたのが実情だ。ところが2008年から急増、昨年の役員としての出向者数は実に100人を超えた。まさに役人の就活花盛りで、出向者のなかには出向期間が切れた途端、退官してしまったケースもある。

 「これでは、出向先の独立行政法人が本省ポストの指定席になりかねない」(野党議員)と危惧する声も聞かれる。

 それでも政府は、改正国家公務員退職手当法施行令で、官僚が現役出向できる先として、日本郵政、NTT東日本、首都高速道路など38法人を追加し、計56法人への現役出向に道を開いた。

 現役出向は、官僚の天下りが批判され、とくに複数の独立行政法人など関係団体に転職を繰り返し、退職金をそのたびに受け取る「渡り」批判に応えた措置と説明されている。出向であれば退職金はないためOKという理屈である。

 しかし、これは詭弁でしかない。実は、「官僚の退職金は、退官後、渡りを繰り返して受け取る退職金と、本省でそのまま同期間在籍して受け取る退職金はほぼ同じ水準になるように調整されている」(霞が関関係者)とされるからだ。

 現在は早期勧奨退職制度が残っているので、早く退職した方が若干、得になるというが、実際はそれほど変わらない。要は退職金を前倒しでもらうか、後で一括してもらうかの違いでしかないというのだ。

 むしろ、親元の官庁による天下り斡旋が禁止された見返りに、これまで退官後2年間は直近5年間に在籍していた関係先に再就職することができないという規制が撤廃され、役人にとっては願ったりかなったりの状況が生まれている。

 このような状況では、政府の天下り斡旋禁止は「ヤブヘビ」(余計なことをして、かえって悪い状態になること)になりかねない。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100730/plt1007301603003-n2.htm