みんなの党、与党急襲 アジェンダ丸飲み“踏み絵”迫る

参院選で躍進した小政党「みんなの党」が存在感を高めるために、奇襲作戦を展開し始めた。衆参両院で多数派が逆転する「ねじれ国会」をテコに、与野党公務員制度改革などアジェンダ(政策課題)の丸飲みを一方的に迫っているのだ。だが、小政党に“踏み絵”を迫られる民主、自民の二大政党は困惑気味。断れば抵抗勢力の烙印、受け入れれば主導権を握られかねないからだ。小が大を動かす構図なのだ。

 「みんなの党は小さな政府、民間主導、成長路線というアジェンダの政党。民主、自民党内にも隠れた同志はいるから結集を呼びかけたい」

 渡辺喜美代表(58)はこう豪語し、民主、自民両党を巻き込んだ政界再編をブチ上げているが、その布石となるのが奇襲作戦だ。アジェンダを矢継ぎ早に与野党に突きつけて政策実現につなげるとともに、両党から賛同者を誘い込もうというわけだ。

 みんなの党は現在、衆参計16人の小所帯。ただ、参院選で10議席増という「ひとり勝ち」の結果、議員立法提出に必要な11人を確保した。

 しかし、与党の負け幅が大き過ぎたため、現状では法案の成否を直接的に左右するには1議席足りない。このため、当面は野党にとどまり、「争点ごとに連携相手を変える『クロス連合』」(渡辺代表)を通じて存在感をアピールする奇襲作戦に動き出したのだ。

 すでに、民主、自民両党などに対し、国会議員の歳費を月単位から日割り支給に改める法案や議員歳費カット法案が臨時国会で成立するよう幹部が協力を求めているが、これはその一環だ。

 民主党にとって断れば抵抗勢力のレッテルがついて回る。自民党にとっても断れば野党共闘に亀裂が生じる。それだけに、両党ともみんなの党の攻勢に防戦を強いられ、「『どうしたものか』というところがある」(細野豪志民主党幹事長代理)と戸惑いを隠さない。

 そんな声をよそに、みんなの党は「一丁目一番地」のアジェンダ公務員制度改革民主党につきつけた。

 みんなの党が掲げる急進的な公務員制度改革の丸飲みは、民主党にとって支持母体の「労組との決別」を意味する。それだけに、同党の玄葉光一郎政調会長は「『丸飲み』はあり得ない。妥協が必要だ」と牽制。

 仙谷由人官房長官に至っては、先の通常国会で公務員改革法案をめぐり両党が対立した経緯に触れ、「(みんなの党が)『民主党が極悪非道で官僚に隷属している』と言うなら議論にならない」と、反発した。

 ある民主党関係者も「いくら参院選の『勝ち組』といっても、アジェンダを百パーセント飲めなんて無茶。虫がよすぎる」と吐き捨てる。

 こうした空気を読んだのか、渡辺代表や江田憲司幹事長は最近、「アジェンダの根幹は譲れないが、微修正はやぶさかではない」とも言い始めたが、「これは危険な誘い水」との見方は強い。

 というのも、「次から次へとアジェンダを突きつける」(渡辺代表)基本方針は崩していないためだ。

 例えば、渡辺代表は27日、特別会計の内容を精査するための「特会見える化法案」を秋の臨時国会に提出する考えを表明した。これは菅内閣が政権浮揚の切り札として予定している事業仕分け第3弾を先取りするものだけに、「事業仕分けという、菅民主党にとって絶好のパフォーマンスの機会を失いかねない」(永田町有力筋)との声も。

 このほかにも、日銀法改正を中心とした「デフレ脱却法案」、日本郵政民営化を促進する法案などの成立に向け、野党側に共同提出を呼びかけていく構えなのだ。

 政治評論家の浅川博忠氏はみんなの党の奇襲作戦について、「いまはアドバルーンを連発し、党の存在感を高めるキャンペーン期間中の意識が強いのだろう。『アジェンダ』や『クロス連合』など、聞き慣れないカタカナ言葉も新味を保つ武器にしている」と指摘。

 そのうえで、「こうした国会活動で実績をあげると同時に、渡辺氏が『総理にふさわしい政治家』のナンバーワンになったことも合わせて党を売り出すことで、統一地方選や次の衆院選で擁立する優秀な人材を集めるのが狙いなのでは」とみるのだが…。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100728/plt1007281623002-n2.htm