Japanese Garden

 かつて恵迪寮を囲むようにしてあった”原始の森”は、現在”恵迪の森”と名づけられています。しかし、昔の面影からかなり変ってしまった感じです。近くに「都ぞ弥生」の恵迪寮歌碑があり、北大の観光スポットの一つになっています。恵迪の森では、雪が解け、林の木に緑が戻らない早春の短い期間に、スプリングエフェメラルと呼ばれている春の野の花を見ることができます。
 
 「春の儚(はかな)いもの」とでも訳せるスプリングエフェメラルは、木の葉が出る前に、日光が遮られないで地面まで届く状況を利用して、太陽の光を吸収し花を開き栄養を蓄え、翌年の春に備えます。4月中旬から5月中旬にかけて恵迪の森には、キクザキイチゲアズマイチゲキバナノアマナエゾエンゴサクニリンソウエンレイソウ等が一斉に咲き出します。
 
 恵迪の森は植生の研究にも利用されているので、関係者以外は林の中には入れません。陸上競技場や恵迪寮に行く道に沿って歩きながら、林の外からこれらの花を観賞することができます。恵迪寮への道の途中に、木造建てで取り壊された昔の恵迪寮の「寄宿舎跡ノ碑」があります。「恵迪」の名前の由来の「書経」の一節が碑面に刻されているのを見ることができます。碑の場所のパノラマ写真でも、写真を拡大していくとイチゲの白い花を見ることができます。
 
 構内にはサクシュコトニ川が流れていて、恵迪の森から歩いてすぐのところにあります。この川に沿って竪穴式住居跡が見つかっており、遺跡保存庭園になっています。しかし、どれが遺跡かほとんどわかりません。この庭園の草地もスプリングエフェメラルで覆われます。現在は人工の川になっているサクシュコトニ川近くの水場には、ミズバショウも見ることができます。川でカモが餌探しをしているのに出会うこともあります。
 
 スプリングエフェメラルが見られる頃は木の葉がないこともあって、野鳥を見るのにも適しています。撮影は難しいのですが、シジュウカラヤマガラコゲラアカゲラなどの野鳥が飛び回っています。カラスが巣作りを開始するころになると、巣のある木に近づくと襲ってきたりするので、春が進行すれば要注意です。
 虫も越冬したものが現われてきます。弱弱しい飛び方のクジャクチョウを見かけました。目立つ翅を開いたり閉じたりしながら地面の枯茎の上に止まっています。どこで、どのように冬の寒さに耐えてきたのでしょうか。スプリングエフェメラルが見られる時季は、越冬昆虫を観察することの出来る季節でもあります。

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