高松農高生が園芸福祉 避難所生活に芝人形で笑顔

6月埼玉へ 福島の双葉町民訪問

生徒が作った芝人形


芝人形を作る生徒たち(岡山市北区の県立高松農高で)
 東京電力福島第一原発事故でいまだに避難所生活を余儀なくされている福島県双葉町の人たちに、心和む一時を過ごしてもらおうと、県立高松農高(岡山市北区)園芸科学科の生徒らが6月、「園芸福祉」として注目される「芝人形」作りを指導する。人形の頭から芝が髪の毛のように生えてくるユニークな園芸で、生徒らは「慣れない土地で不自由な生活を続けている方々を笑顔にしたい」と準備を進めている。(有留貴博)

 芝人形は、ストッキングの中に西洋芝の種と土を入れて育てる。ストッキングの「頭部」に目や鼻、ペットボトルの「胴体」を付け、毛糸やフェルトで服を作って人形らしくする。約1週間で芝の「髪」が生え、その後は半年ほど「散髪」(芝の間引き)をして手入れする。

 園芸科学科では2003年、生徒らが自閉症の子どもと一緒に芝人形を作ったところ、「子どもの気持ちが落ち着いた」と保護者に喜ばれた。以来、授業の一環として福祉施設の入所者らに作り方を教えてきた。お年寄りからは「作る楽しさに加え、芝の生育を見る喜びもある」と好評という。

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 今回の被災者支援は、同農高の三宅道治指導教諭(57)が、知り合いの福島県双葉町職員を通じて「長い避難生活で疲れている人たちに芝人形を楽しんでほしい」と申し出て実現した。

 双葉町は、原発事故で警戒区域に指定され、昨年3月、役場機能を約210キロ離れた埼玉県加須市の旧県立騎西高の校舎に移転した。同校舎には最大で約1200人の町民が身を寄せていたが、仮設住宅などへの引っ越しが進み、今月20日現在は289人。東日本大震災で唯一残る一次避難所だ。

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 生徒らは6月上旬に加須市を訪れる予定。2、3年生23人が、3月から放課後などに人形100体分の材料となるペットボトルやフェルトをはさみなどで切る作業を続けている。被災者との会話が弾むように、福島弁も学ぶという。

 3年の光畑青空さん(17)は「被災地のために何かしたい気持ちはあったが、何をしていいか分からなかった。農高らしい支援が出来そう」と話し、3年の中村しおりさん(17)も「作って良かったと満足してもらえるように、心を込めて準備をしたい」と張り切っている。

 <園芸福祉> 草花などの世話を通して、心身に障害がある人の機能回復を図る「園芸療法」の対象を一般市民にも広げたもの。心が安らぐ心理的効果や手足を動かすことによる機能低下防止、仲間づくりなどの効用が期待されている。

(2012年4月24日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20120423-OYT8T01350.htm