GDPは予想を上回ったが需要を先食いした「あだ花」10〜12月期は反動減の恐れ

最近は「QE」というと、英字新聞で目につくQuantitative Easing(量的緩和)であるが、今回のQEはQuick Estimates、四半期別GDP速報である。

 内閣府が15日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)の一次速報値は、物価変動を除いた実質成長率が前期比プラス0・9%、年率換算でプラス3・9%となり、4四半期連続のプラス成長だった。多くの民間シンクタンクでは、2%台半ばを予想していたので、それらを大きく上回る数字であった。

 7〜9月期の高い伸びは需要拡大政策に大きく起因している。例えば、10月1日から、タバコ税が大幅に引き上げられた。値上げ幅は過去最大で、1箱あたり110〜140円だったので、9月には駆け込み需要が発生した。このGDP押し上げは微々たるものであるが、エコカー補助金の打ち切りの前の駆け込み需要や家電エコポイントでも、同じように需要の先食いになっている。このため、個人消費はプラス1・1%と6四半期連続で増加し、増加幅も4〜6月期のプラス0・1%から大幅に拡大した。

 一方、外需は伸びていない。輸出から輸入を差し引いた外需の成長率への寄与度はプラス0・0ポイントで、4〜6月期のプラス0・3ポイントから低下した。アジア市場を中心として、海外景気の回復に不透明感があるためだ。

 名目GDP成長率は前期比プラス0・7%と2四半期ぶりのプラス成長だった。年率換算でもプラス2・9%。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比マイナス2・0%であり、4〜6月期にはマイナス1・8%であったが悪化し、依然としてデフレ脱却のめどは立っていない。

 実質成長率の年率換算プラス3・9%は、予想以上の数字であったために、株式市場などは一時的に反応する可能性がある。しかし、そのうち将来の反動需要減を見込むので、7〜9月期の一次速報値は一瞬のあだ花になるだろう。

 個人消費が先食い需要である限り、その反動は必ずある。11日発表された経済企画協会のESPフォーキャスト調査では、民間エコノミストの7〜9月期の実質成長率予想の平均はプラス2・3%で、10〜12月期にはマイナス0・9%に落ち込むと予想している。

 7〜9月期が予想以上に高く出たことで駆け込み需要の反動減がさらに大きくなり、さらに最近の円高が定着し円安の方向が見えないことから、マイナス幅はさらに大きくなる可能性がある。

 菅政権は外交の失敗で支持率が低下しているが、これからの景気悪化はそれに拍車をかけるだろう。

(嘉悦大教授、元内閣参事官高橋洋一

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101116/plt1011161559001-n1.htm