【安倍晋三の突破する政治】「場当たり」「小手先」「友愛」など通用しない
自民党の安倍晋三元首相(56)が13日から、新連載コラム「突破する政治」をスタートさせた。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件をめぐる菅直人首相(63)らの「弱腰・屈辱外交」や、民主党の小沢一郎元代表(68)の強制起訴決定、円高基調が続く日本経済の先行き不安など、日本は激動・混迷の時代を迎えている。保守派のリーダーは何を考え、何を提示するのか。キレ味鋭い晋三節が炸裂した。
−−臨時国会で、本格論戦がスタートした
「憲政史上類を見ない、ひどい首相答弁が続いている。国民が怒りに震えた尖閣事件で、菅首相は核心について明確に答えない。代表質問で、わが党の稲田朋美議員らが鋭い質問をぶつけると、まるでチンピラが絡むようにイチャモンを付けていた。私はあぜんとするだけだった」
−−中国人船長の釈放も、菅首相は「検察の判断」を繰り返していた
「卑怯であり、責任の放棄だ。領土・領海など主権にかかわる問題では、国家が前面に出て、その意志を堂々と中国や世界に示すべき。ところが、菅首相は那覇地検石垣支部の陰に隠れている。一国のリーダーとしてあり得ない姿だ」
−−事件の最中、準ゼネコン「フジタ」の社員4人が中国に拘束された
「先週末、最後まで拘束されていた高橋定さんが解放されたことは良かった。ただ、菅首相がASEM(アジア欧州会議)で、中国の温家宝首相と懇談した際、釈放を求めなかったことは許しがたい。大体、菅首相はお願いして温首相と会った。その瞬間、中国は外交上の勝利を得ている」
「他国に対し、首相が『国民の生命・財産を守る。同胞には指一本触れさせない』という意志を示さなければ、日本国民は安心して海外に出かけられない。私ならば真っ先に、フジタ社員の無条件釈放を求めた」
−−民主党政権が発足してから、中国が増長したとの指摘もある
「それは明らかだ。昨年末、天皇陛下と中国の習近平国家副主席の会見が特例措置で決まった。中国は『自分たちは陛下の権威すら左右できる』と誤った自信を持った。民主党政権は『中国から嫌がるから』と、尖閣に近い与那国島への陸上自衛隊配備も見送った」
「今春以降、中国海軍のヘリコプターが海上自衛隊の護衛艦に異常接近するなどしてきたが、民主党政権は毅然と抗議をしていない。中国は『民主党政権は国益を守る決意がない。今のうちに取れるものを取ろう』と勢いづいている」
−−安倍政権時代は違ったか
「私は首相就任前から、『断固として国益を守る』という決意をし、対中国の外交戦略を立てていた。就任直後の2006年10月に訪中して戦略的互恵関係を結んだが、帰国後すぐ、防衛庁を省に昇格させ、集団的自衛権行使を検討する懇談会を設置した。12月には(中国の隣国である)インドと戦略的グローバル・パートナーシップも構築した」
「年が明けて1月にはNATO(北大西洋条約機構)理事会で『自衛隊を海外に出すことを躊躇しない』と演説し、中国への武器輸出の危険を主張。3月にはオーストラリアと安全保障協力に関する共同宣言に署名した。こうした外交手順を踏んで、4月に温首相を日本に迎えた。この間、中国は一切抗議せず、尖閣でも東シナ海でもチャレンジしてこなかった」
−−民主党外交は場当たり的なのか
「場当たり的ゆえに、中国に付け込まれる。外交は今も昔もしたたかな弱肉強食の世界。百戦錬磨の強者たちが、国益を守るために知恵を絞り、陰謀、策謀、恫喝もいとわず対峙している。『場当たり』『小手先』『友愛』などは通用しない」
「そもそも、菅首相は、拉致実行犯である北朝鮮の元工作員、辛光洙(シンガンス)元死刑囚の釈放を韓国政府に要求した人物。国会で『うっかり署名した』と釈明していたが、自民党にはそんなバカな議員は1人もいない」
−−先週、民主党の小沢元代表に、検察審査会が2度目の「起訴相当」議決を出し、強制起訴が決まった
「検察審査会制度は、検察官が独占していた公訴権(起訴の権限)の行使に、一般国民の良識を反映させようというもの。今回、初めて国会議員が強制起訴となる。重く受け止めるべきだ」
−−菅首相は、小沢氏の離党・議員辞職について、「本人の判断」とか「岡田克也幹事長(57)が…」などと語っている
「また、逃げている。本当に情けない。小沢氏は民主党代表も務めた大物。昨年の衆院選勝利の立役者でもある。新人・中堅議員ならば幹事長任せでもいいが、当然、菅首相が離党を迫るべき。民主党は小沢氏とともに裁判を戦う気なのか」
−−民主党は「クリーンでオープンな政党」を掲げていた
「看板に偽りありだ。小沢氏と鳩山由紀夫前首相は『政治とカネ』の問題を抱え、『影の宰相』と呼ばれる仙谷由人官房長官(64)も事務所費問題を指摘された。自民党時代なら即辞職だ。まったくクリーンではない。中国漁船衝突時のビデオテープも、朝鮮学校無料化を審議するメンバーも公開しない。こんなクローズな政党はない」
−−日本経済も厳しい。円高が止まらない
「菅内閣の円高対策には何の効果もなかった。世界各国は自国通貨を安くする競争に入っており、統治能力欠如が目立つ日本がターゲットになっている。輸出企業への影響は深刻だ。一方、円高のうちに海外資源を確保したり、政府系金融機関のファイナンスで日本企業に外国企業を買収させる知恵もない」
−−ねじれ国会をどう戦う
「野党多数の参院が最大の戦場となる。国民生活を守るための補正予算には、わが党の主張を盛り込ませるよう、是々非々で対応していく。しかし、基本姿勢はあくまで『倒閣』『衆院解散』だ。それが、日本を立て直し、景気を回復させる一番の近道だ」
−−連載スタートの意気込みを
「私は官房副長官時代、やや過激な発言が多く、周囲から『物議を醸してどうする』とたしなめられた(笑)。ただ、戦後レジームを打ち破る突破口になったと自負している。首相時代は逆に、『少し発言がおとなしすぎる』といわれた。原点に戻り、大いに議論を呼ぶコラムにしたい」
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101013/plt1010131751002-n1.htm