菅、自民つぶしの大バクチ“消費税10%”ブチ上げ!

菅直人首相(63)が参院選「7・11」に向けて大バクチに打って出た。17日の参院選マニフェスト発表に合わせて、「消費税10%」をブチ上げたのだ。増税論議はこれまで国政選挙の大敗につながる“鬼門”だったが、高支持率を背景に、10%への増税を掲げ責任政党を自負する自民党との「争点隠し」を狙ったのだ。だが、与党内からは選挙への影響を懸念して、「お遍路で頭を冷やしてこい」などとの批判が噴出。首相の賭けは吉とでるか、凶とでるか。

 「これまで長く消費税の論議をタブー視する傾向があったが、思い切ってマニフェストに書かせてもらった」

 首相は17日の記者会見でこう強調し、自らの決断で参院選マニフェストに消費税を盛り込んだことを明らかにした。

 さらに、「税の大きな負担をお願いすることは政治家にとってできればしたくないという思いがある」と述べつつも、国の厳しい財政事情に理解を求めた。

 民主党は昨年の総選挙のマニフェストで消費税増税に触れておらず、鳩山由紀夫前首相(63)は「私どもが政権を担う4年間、消費税の増税をする必要はない」と明言。8日の菅政権発足前の民主党も、「次期衆院選後の消費税を含む税制の抜本改革」との表現にとどめる方向で調整していた。

 ところが、首相はあえて「早期に結論を得る」と踏み込み、引き上げ幅も自民党公約の10%を「ひとつの参考にしたい」と言い放ったのだ。玄葉光一郎政調会長(46)も18日午前、首相の増税発言は党の公約との認識を示した。

 狙いは、国債増発に頼る借金まみれの財政状況の改善だが、参院選で「消費税10%」を掲げた自民党への対抗心がありあり。首相周辺が「今が絶好機だ」というように、「このタイミングで増税路線に踏み切る自民党に抱きつくことで、『争点隠し』になる」(民主党関係者)というわけだ。

 もともと、首相は鳩山政権の財務相時代、消費税論議を始める意向を表明し党内に波紋を広げた張本人で、消費税増税に慎重だった小沢一郎前幹事長(68)が執行部から去るなど、「重し」がとれたことも大きいようだ。

 こうした菅首相のバクチ発言に、税制論議民主党との差別化を図ろうとした自民党側は思惑を外された格好となり、怒り心頭だ。

 石破茂政調会長(53)は17日、首相の増税発言について「抱きつきお化け。クリンチだ」と不快感を示したうえで、「民主党の政策実現には消費税は20%から25%になる。我々は責任ある根拠を示し、10%という数字をはじきだした」と批判した。

 公明党幹部も「将来、社会保障などにどの程度の財源が不足するから、この程度の歳入が必要という計算をした形跡はない。単純に自民と同じ『10%』という数字をブチ上げただけだ」といい、無責任な菅流サプライズに憤りをあらわにする。

 与党内にも波紋が広がっている。

 原口一博総務相(50)が「(10%の数字は)他党の考えを参考にする意味だ。私たちが10%に上げるということでは断じてない」といえば、高嶋良充参院幹事長(69)も「参院選に悪影響を及ぼす。軽率に言うべきではない」と批判した。

 連立を組む国民新党亀井静香代表(73)も18日、消費税増税を猛批判。森田高政調会長(42)に至っては「首相の増税発言は重い。もし根拠なしに言ったのなら、もう一度、四国をお遍路で回って頭を冷やされた方が良い」とまで述べたのだ。

 強い反発の背景には、消費税がこれまで導入や増税のたびに世論の不評を招き、選挙の勝敗を左右してきたためだ。

 例えば、1979年に大平正芳首相が「一般消費税」導入を掲げて臨んだ衆院選自民党の大敗。最近では98年の参院選で、橋本龍太郎首相が消費税5%増税を訴えたが、「不況下の増税」と批判され、自民党は惨敗。橋本氏は引責辞任に追い込まれた。

 民主党有力筋の1人は「消費税増税は、社会保障や税制の抜本改革とセットで考えなければならない問題だ。首相は10%増税をブチあげたが、そうした土台は何もできていないのが実情だ。今後、首相はさまざまな機会に突っ込まれるが、抽象論だけでは済まなくなり迷走でもすれば、選挙情勢はガラリと変わる恐れがある」と懸念する。

 実際、首相は17日夜、「(民主党の)党務のため時間的に難しくなった」として、記者団によるぶらさがり取材に応じなかったが、大バクチの勝算はいかに−。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100618/plt1006181625006-n2.htm