菅・小沢、決裂!会談100分…招致拒否「議決でも出ない」

菅直人首相(64)は20日、民主党小沢一郎元代表(68)と首相官邸で会談し、衆院政治倫理審査会(政倫審)に出席するよう要請。しかし、小沢氏は「(招致が)議決されても出ない」と主張を曲げず、直接対決は決裂した。強硬姿勢の菅首相は「小沢切り」に政権浮揚の最後の望みを託すが、自民党は議決拒否に転じるなど、菅パフォーマンスにほころびが出始めた。社民党や少数野党にこびを売って通常国会を乗り切ろうとした菅首相だが、権力固執策も限界に近づきつつある。

 菅首相「政倫審に自ら出てほしい。『国会が決めれば、私はいつでも出る』と言っていたじゃないですか」

 小沢氏「裁判で身の潔白を証明する。議決されても出ない。(大型選挙の連敗などは)『政治とカネ』以外の影響が大きいんじゃないか」

 菅首相「それでは、何らか党としての方向性を決めなければならない。小沢さんの政治とカネの問題も、どの程度の幅かは別として(影響が)ある。ぜひ全党的立場から協力してほしい」

 約1時間40分、2人だけで対峙した菅首相と小沢氏。しかし、双方の主張はどこまでも平行線をたどって終わった。小沢氏は首相官邸を後にする際、記者団の質問は一切無視したが、顔には高揚感すら漂っていた。

 小沢氏は同日午前、周辺議員に「一切動くな。集まるな」と述べたという。菅首相との直談判にすべてをかけようとしたが、生産的な話はできなかったようだ。

 民主党は同日中に党役員会を開き小沢氏の招致問題を議論するが、首相サイドは一歩も引かない構えだ。菅内閣の支持率が低迷する中、小沢切りという政権浮揚策は死活問題だからだ。

 しかし、政倫審への出席を求めて議決を行なう作戦も、ここへ来てほつれが見え始めた。

 「アリバイ工作の片棒を担ぐつもりはない。どんなに議決しても出てこないでしょ」

 自民党石原伸晃幹事長は19日のテレビ番組でこう述べ、強制力のない政倫審の議決を拒否する考えを示したのだ。

 自民党はこれまで「政倫審も疑惑解明の第一歩」と議決に応じる意向だった。しかし、17日夕に石原氏や大島理森副総裁、逢沢一郎国対委員長が党本部で会談し「菅首相の小芝居に付き合う必要はない」と方針転換を決定。自民党として早期に菅首相を追い込む方向に舵を切ったわけだ。逢沢氏はこの直前公明党の漆原良夫国対委員長と会談。議決容認派だった公明党も拒否で肩を並べる可能性が出てきている。

 その政倫審は、民主党17人、自民党7人、公明党1人の全25人で構成。審査会は過半数の出席で成立するため、民主党議員が13人出席して議決に賛成すれば小沢氏招致が決まる。しかし、ここでネックとなるのが、6人の小沢系民主党委員だ。

 6人は、「検察の横暴」など小沢氏寄りの国会質問を続けた川内博史衆院議員や、「小沢ガールズ」筆頭格の三宅雪子衆院議員など、親小沢の強者ばかり。党執行部は「党国対委員長の命で政倫審は差し替えれる」と強気の姿勢だが、小沢陣営は猛抵抗する構えだ。

 菅首相は小沢氏が政倫審出席を決断しない場合、離党勧告も視野に入れているとされる。ただ、小沢系の集団離党も誘発しかねない荒療治に乗り出す度胸があるかは疑問だ。

 永田町有力筋はこう話す。

 「菅首相は11月から、社民党や少数野党に対して、『衆院で(再可決可能な)3分の2を確保したい』と称し、年明けの通常国会での協力を呼びかけている。社民党を入れてようやく3分の2に届くギリギリの勢力しかないのに、小沢系議員が10人でも離党すれば、2011年度予算の執行に必要な予算関連法案が通る保証はなくなり、大混乱は必至。その時の対応まで絵が描けているとはとても思えない」

 菅首相が強い態度に出るのも「自民党からも嫌われる小沢系は離党しても展望がなく、党内に残らざるを得ない」(民主党関係者)とみているからだ。確かに、来年には刑事被告人として法廷に立つ可能性が高い小沢氏には、公明党自民党の若手にアレルギーがあり、連携は難しい。

 しかし、小沢系が民主党から飛び出した場合、野党の対応次第では来年の通常国会で予算案以外の法案は1本も通らなくなる。菅首相が離党勧告を決断するというのは、そこまで覚悟を固める必要があるのだ。

 小沢氏は19日、そんな菅サイドの焦りは素知らぬ顔で、1カ月前に菅首相と会談した与謝野馨たちあがれ日本共同代表と囲碁を楽しんだ。そして、終盤まで有利に戦った与謝野氏を、小沢氏が一手で形勢を大逆転させ勝利をもぎ取った。

 「劣勢のときに我慢できるかどうか。小沢先生はますます上手になっていますなあ」と持ち上げる与謝野氏に、小沢氏は「苦し紛れの窮余の一策だ」とニッコリしたという。囲碁同様、小沢氏に大逆転策はあるのか。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101220/plt1012201637004-n1.htm