次世代蠢く「ポスト菅」争い 無党派そっぽ“派閥化”急進行

民主党の議員グループの派閥化が進んでいる。元々は束縛が緩くサークルに近いノリだったものが、菅直人首相(64)と小沢一郎元代表(68)による厳しい代表選を経て数の力を痛感。会合を定例化させるなど結束を固める力学が働いているのだ。さらに、先の参院選に続く衆院補選の惨敗で菅首相の求心力が著しく低下しているだけに、ポスト菅を見据えた権力闘争の動きとも言えそうだ。

 24日に投開票された北海道5区補選で民主党候補が惨敗したことは、先の参院選での大敗もあるだけに、菅首相の「選挙に弱い」という印象を強固なものにした。

 小沢氏に近い中堅議員は「無党派層が完全に離れた。来春には統一地方選があるのに環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で農業の貿易自由化を進めるといい、地方の不安をあおっている」と指摘、「こんな選挙下手の菅首相のもとで解散・総選挙をしたい議員はほとんどいないはず」と語る。

 党内には「菅首相は2年後の代表選での3選はまず無理だろうし、仮に臨時国会を乗り切ったとしても、通常国会の予算案や関連法案の審議で4月ごろには行き詰まる可能性は高い。それだけに、表紙を替えようという声はだんだん大きくなるのでは」(若手)との声もある。

 こうした中、自民党の各派閥が毎週木曜日に昼食を取りながらの定例会を行っているように、民主党も木曜日が「派閥の日」になりつつある。

 前原誠司外相(48)を中心とする「凌雲会」は今月中旬、不定期だった会合を毎週木曜昼に開催することを決定。先週21日も約40人が集まり、そろってカレーライスを食べた。

 また、樽床伸二衆院国家基本政策委員長(51)らの「青山会」、鳩山由紀夫前首相(63)の「政権公約を実現する会」や、野田佳彦財務相(53)の「花斉会」も木曜日に会合を持つ。

 従来、民主党のグループは「二重国籍、三重国籍」と呼ばれる掛け持ちや名ばかりの「幽霊会員」が黙認されているのが特徴だった。これに対し、自民党の派閥は結束が固く、首相候補の選定、ポストやカネの配分、若手議員の教育、候補者の発掘などの機能を果たした。

 今回、会合が木曜日にそろったことで、どこに出席するか“踏み絵”を迫られるケースも出る。

 一方、所属議員に掛け持ちの多い旧民社党系は12日、火曜昼に会合を開く方針を決定。小沢氏に近い衆院中堅議員らの「一新会」は、木曜昼から火曜昼への変更を検討している。双方ともに競合を避ける狙いとみられる。また、主要8グループのうち、菅首相系と、旧社会党系は会合を定例化していない。

 このように急速に派閥化を進める契機となったのは、謀略情報などが飛び交った9月の代表選だ。勝利した菅首相を支持したグループは重用される一方で、負け組の小沢グループは「冷や飯食い」を強いられている。この信賞必罰ぶりは、派閥全盛時代の自民党をほうふつとさせる。

 ■無策の菅は支持できない

 一方で、菅首相退陣後をにらんだ動きとの見方も強い。反小沢に属する民主党中堅議員は次のように打ち明ける。

 「誰も無策の菅首相を積極的には支持していない。小沢、鳩山、菅のトロイカ時代を終わらせ、世代交代への歯車を回すのが菅首相に期待される唯一の役目だ。いつかは分からないが、ポスト菅は次世代による激烈な権力闘争になる。最大与党のトップは首相になるため、グループの緩やかなつながりなどあり得ない。派閥化は当然の流れだ」

 「ポスト菅」としては、凌雲会では党代表経験者でもある前原氏のほか、今や「影の首相」とも呼ばれるほど権力を手中にしている仙谷由人官房長官(64)、事業仕分けで名をはせた枝野幸男幹事長代理(46)、保守派で人望のある玄葉光一郎国家戦略相(46)らの名前があがっている。

 花斉会では野田氏のほか、「事業仕分け」で脚光を浴びた蓮舫行政刷新担当相(42)の名前も浮上している。

 このほか主流派内には、「ポスト菅の一番手」(中堅)との声もある岡田克也幹事長(57)もいるが、私的な勉強会は主宰しているものの、派閥・グループ化はしていない。

 一方、非主流派に追いやられている小沢、鳩山両グループは、首相候補の不在がアキレス腱となっている。小沢系は一新会のほか、衆院1回生による一新会倶楽部参院、旧自由党系ベテランを統合し、小沢氏支持で純化を図る案がある一方、鳩山グループと統合して数を確保しようとする案もあり、揺れている。

 民主党関係者は「小沢・鳩山系などに担がれることで首相を狙おうというのが、樽床氏や海江田万里経済財政担当相(61)、原口一博総務相(51)、細野豪志衆院議員(39)ら。また、小沢鋭仁環境相(56)が勉強会を立ち上げ、鳩山氏からの代替わりを狙っている」と解説する。

 「政治ちゅうのは、結局は権力闘争ですよ」とはかつての小沢氏の言。近い将来にある血みどろの戦いに向け、地殻変動はゆっくりと、そして確実に起こっている。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101026/plt1010261640007-n1.htm