小沢強制起訴、仙谷“高笑い”「憎悪」と「嫌悪」渦巻き

民主党小沢一郎元幹事長(68)が政治生命の危機に立たされた。陸山会事件で自らが被告となる強制起訴が決まり、野党からは証人喚問や議員辞職を求める声が噴出している。疑心暗鬼にとらわれた周辺議員らは、宿敵で「影の宰相」こと仙谷由人官房長官(64)が「最終戦争を仕掛けてきた」と怒りを震わせる。剛腕政治家はこのまま「政治的な死」を迎えるのか。

 「これは仙谷の差し金だ! いつも、菅(直人首相)がいない時に重要な決断が下されている。勝手に(仙谷氏が)どんどんやっている。(国民的批判が凄まじい)尖閣問題から、国民の目をそらそうとしている」

 小沢氏に近いベテラン議員は4日夕、「小沢氏、強制起訴」の報を聞き、怒り心頭といった様子で、こう吐き捨てた。仙谷氏が検察審査会に関与した確証はないが、確かに、小沢、仙谷両氏の間には「憎悪」とも「嫌悪」ともいえる、緊張感が張り詰めている。

 同日午後の定例会見でも、仙谷氏は異様としかいいようがない態度を見せた。

 記者団から、強制起訴に対する感想を求められると、仙谷氏は「私の立場でコメントすることは差し控えたい」「起訴されても判決が確定するまでは推定無罪だ」などと、政府首脳として中立の立場を強調したが、こう付け加えたのだ。

 「官房長官でなくなったら、じっくりお話しするか、書き物にするか、それは考えます」

 言いたいが言えない。いつかすべてを暴露してやる−。そんな高揚感が表情や態度から伝わってきた。会見に出席した記者らは「仙谷氏は喜んでいるようだった」と語った。

 「遅れてきた実力者」「阿波の策士」などの異名をとる仙谷氏は1946年、徳島市生まれ。東大時代に学生運動に走り、在学中に司法試験に合格して弁護士に。90年に社会党から衆院に初当選。その後、民主党に移り、政調会長国対委員長などを歴任してきた。

 47歳で自民党幹事長に抜擢され、その後、20年以上も政界中枢にいた小沢氏とは政治手法や理念がまったく違う。前原誠司外相(48)や枝野幸男幹事長代理(46)とともに「反小沢」の筆頭格といわれてきた。

 昨年3月の西松事件発覚直後から、小沢氏への敵意をあらわにし始め、今年6月の菅内閣発足時には、徹底的な「脱小沢」「反小沢」人事を主導。9月の民主党代表選では、直前に小沢氏と手打ちしようとした菅首相を「ふざけるな!」と一喝。その後も同党の「脱小沢」「反小沢」をけん引してきた。

 「仙谷氏の執念は凄い。小沢氏を『悪魔』と呼び、生きるか死ぬかの権力闘争を繰り広げた自民党野中広務元幹事長にまで、いろいろ相談していたという」(民主党関係者)

 まさに、仙谷氏は着々と「小沢潰し」の駒を進めてきたのだ。

 今後、小沢氏は東京地裁が指定する検察官役の弁護士によって強制的に起訴される。小沢氏は「裁判の場で私が無実であることが必ず明らかになるとものと確信しております」とのコメントを公表するなど、復権への意欲を見せるが、現状はそう甘くない。

 検察審査会による「強制起訴決定」を受け、野党各党は「(議員辞職)なされるべきだ」(自民党谷垣禎一総裁)などと、小沢氏の議員辞職を求めるとともに、まずは報道各社の世論調査などで8割前後が「小沢氏は説明責任を果たしていない」と答えていることから、証人喚問を求める考えを示している。

 現時点で、民主党幹部は「コメントはちょっと控えさせていただきたい」(菅首相)、「まず、小沢氏が国民に自ら考えを示されるべき」(岡田克也幹事長)と、党としての方針を明らかにしていないが、これも、狡猾な仙谷流「小沢潰し」との見方が囁かれている。

 小沢氏に近い中堅議員は「尖閣問題で中国人船長の釈放判断を検察に丸投げしたように、小沢氏に引導を渡す役目を野党や世論にさせようとしている。現に、仙谷に近い閣僚は『大人なんだから、(小沢氏に)離党勧告や除名などをするわけがない。静かに見守るんだよ』とウソぶいている」と怒りをブチまける。

 代表選で小沢氏を支持した海江田万里経済財政担当相や原口一博総務相らは「(小沢氏が)事実を語れば無罪の判決が出ると思う」と必死に擁護するが、裁判で判決が出るまで、小沢氏の政治活動に一定の制限が課せられるのは間違いない。

 衆参ねじれで、菅内閣が行き詰まって退陣する事態になっても、小沢氏の代表選出馬や要職就任は難しい。刑事被告人をリーダーとして、集団離党して政界再編という選択肢も世論の支持は得られそうにない。小沢氏と仙谷氏の最終戦争は、このまま投了となってしまうのか。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20101005/plt1010051614006-n1.htm