中露が対日圧力でタッグ!土下座しかない“最弱”菅外交

沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の対応をめぐって、無能批判を浴びる菅直人政権が、またもや“弱腰度”を強めている。事実上の首相特使として、民主党細野豪志前幹事長代理(39)を極秘訪中させ、関係改善に動いたのだ。ただ、落ち度のない日本側が出向いて関係改善を働きかける場当たり的な対応に、「土下座外交」批判が噴出するのは必至。外交無策という弱点をみすえ、大国・ロシアも北方領土問題で揺さぶりをかけており、日本の危機は深まっている。

 「これまでの私個人の人間関係の中でこちら(中国)にきた。中国には古い友人もいる。首相特使ではない」

 29日夜の中国・北京。細野氏は記者団に首相特使説を否定したうえで、中国側との会談相手についても「答えられない」と語った。

 ただ、額面通り受け取る向きは少ない。細野氏を乗せたとみられる車列が釣魚台迎賓館に入るところを目撃されており、中国政府要人と会談したのは間違いない。民主党関係者も「日中関係の関係修復に向けて、(10月4、5両日開催の)アジア欧州会議(ASEM)首脳会議の際、菅首相と中国の温家宝首相との会談が実現できるよう打診しにいった。当然、首相特使として首相の親書も携えているはずだ」と明かす。

 細野氏の極秘訪中について、菅首相は29日、「まったく承知していない」。前原誠司外相(48)も「数日前に聞いていたが、政府の判断ではない」とうそぶくが、なぜ細野氏が首相特使に選ばれたのか。

 細野氏は党内では前原グループに所属しているが、中国との関係が深い「一兵卒」小沢一郎元幹事長(68)との距離も近い。先の代表選で小沢氏を支持したうえ、昨年末の小沢氏率いる大訪中団では、中国側との事務折衝役となった。それだけに、永田町事情通は「首相としては、直接的に小沢氏に頼むワケにはいかないが、小沢氏の中国への影響力も考慮し、細野氏を選んだのだろう」とみる。

 その細野氏の会談相手だが、外交統括で副首相級の大物、戴秉国・国務委員とみられる。実は中国側は衝突事件直後、強硬姿勢のウラで戴秉国国務委員と岡田克也外相(当時)との緊急電話会談を持ち込んできた。しかし、岡田氏はこれを拒否してしまい、「中国側の怒りに火をつけた」という。

 このため、菅首相は27日、国会日程を変更してまで、欠席予定のASEMに急きょ出席する方向に切り替え、現地での日中首脳会談の模索を始めた。

 ちょうどこの時期に首相特使として首相側から細野氏に要請があったとみられ、細野氏が中国要人に日中首脳会談実現を求めたのだ。

 ■仙谷までもが敬語連発…

 ただ、細野氏の極秘訪中に関し、永田町では「領土問題は存在しないし、こちらになんの落ち度もないのに、なぜ日本側から出向かなければいけないのか」(自民党関係者)との不満が蔓延している。

 こうした空気を意識したのか、前原外相も「今の段階でこちらからアクションをとる必要はない」と不快感を示し、仙谷由人官房長官も中国人船長釈放で「ボールは中国側にあると申し上げてきた」と繰り返してきた。

 しかし、これは表向き。実際のところ菅政権は「細野氏の極秘訪中のように、もはや土下座外交でしか解決できないところまで追い詰められている」(永田町有力筋)のだ。その象徴とも言えるのが、衝突事件をめぐる仙谷氏の言葉の使い方だ。

 中国人船長の釈放で中国側が軟化するとの思惑が外れ、逆に強硬姿勢を曲げなかったことについて、「中国は司法権の独立、政治・行政と司法の関係が近代化され、ずいぶん変わってきていると認識していたが…」としつつ、こう結んだ。

 「あまりお変わりになっていなかった」

 なぜか敬語を交えて自らの甘い中国認識を反省したわけだが、衝突事件をめぐる仙谷氏の中国に対する発言は「敬語」の連発なのだ。

 今月13日に船長以外の船員14人と漁船を中国に戻す際には、「14人と船がお帰りになれば、違った状況が開けてくるのではないか」と言い、東シナ海ガス田付近を航行中の中国の海洋調査船についても「周辺にいらっしゃることは確認している」と述べている。

 こうした中、大国のロシアも日本政府の弱みにつけこんで、メドべージェフ大統領が29日、北方領土を訪問する意向を表明した。

 北方領土の実行支配の強化を目指すロシア側の強い意思の表れだが、中国に続いてロシアまでも、領土問題で揺さぶりをかけてきたわけだ。

 民主党中堅議員は「水に落ちた犬をたたけ、とばかりに露骨すぎる」と不快感を示すが、菅政権の外交無策のツケが次々と日本を窮地に陥れている。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100930/plt1009301641003-n1.htm