【激震2010 民主党政権下の日本】小沢構想「国の資産証券化」新たな財源にはならないが官のスリム化に利用できる

民主党の代表選がスタートした。小沢一郎前幹事長は1日午後、菅直人総理との共同会見を行い、その中で、政策実行の財源について「600兆円の国の資産のうち200兆円ぐらいは証券化できるといわれている。十分、我々の主張する財源は捻出(ねんしゅつ)できる」と指摘した。

 この発言は、関係者の関心を呼んでいる。仙谷由人官房長官は2日午前の記者会見で「うまくいくのか、あまりイメージがわかない。簡単な話ではないんじゃないか」と疑問を呈した。

 この話の背景について、小沢氏を支持する海江田万里衆議院議員のサイトに「財源について(中略)国の資産を担保にして、新たな債券(若しくは証券)を発行」「国の資産は売り払うのではなく、有効活用すべき」という記述がある。

 まず、国は国債という形で無担保債券発行ができる。だから、国の場合こうした証券化は、資産をオフバランス化して実質的に売却するときに用いられる手法だ。サイトにある「外為特会、国債整理基金」の資産はすでに国債発行によって調達した資産であり、これらを担保とする債券発行は無意味で、新たに国債を発行することと同じだ。したがって、そのサイトにあるような証券化は、財源とは言えない。国債発行すれば財源はいくらでもあるという話と同じだからだ。

 しかし、国における資産の証券化を本来の意味である資産のオフバランス化による資金調達と理解すれば、面白い。

 まず、国の資産のうち200兆円ぐらいは、特殊法人独立行政法人等への出資金や貸付金という金融資産であるので、金融技術的な観点から言えば、証券化は容易だ。証券化は、金融機関によって良い商売になるので、すぐに提案書を持って駆けつけてくれる。しかし、200兆円は財源にならない。理由はすでに述べたとおりだ。

 ただし、財源論ではなく、官をスリム化する観点ではいいポイントをついている。というのは、出資金を証券化し売却するというのは、特殊法人独立行政法人等の民営化にほかならない。ということは、それらに投入されていた補助金等はなくなる。その派生効果として、天下りもほとんどなくなる。節約される補助金等はおそらく数兆円であろう。

 しかし、廃止民営化されて天下り先を失う官僚からの抵抗は凄まじいだろう。さらに、小沢前幹事長は、全国郵便局長会の支持を受けているので、日本郵政の株式売却をできない。これは、200兆円の証券化・売却という話と矛盾するが、どうするのだろうか。まさか郵政だけ特別扱いでは、特殊法人等を所管する各省を説き伏せるのは難しいだろう。

(嘉悦大教授、元内閣参事官高橋洋一


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