官僚べったり菅、深まる孤立…閣内・党内から不満爆発

菅直人首相(63)が閣内・党内から猛攻撃を受けている。閣僚らが2011年度予算編成での歳出削減に反発し、政権交代の目玉だった国家戦略室の役割縮小には有力議員らが反旗を翻した。菅内閣にチラつく「官僚主導復活」の影。参院選大敗で首相の求心力が低下する中、9月の代表選での再選戦略にも狂いが出そうだ。

 「この日本をですね、本当に元気のいい、そして、一人一人が孤立するようなことがないようなですね、そういう日本にしていきたい」

 菅首相は21日夕、官邸内で記者団にこう語った。自身が掲げる「最小不幸社会」について語ったものだが、閣内や党内で孤立しつつある自分を重ねたのかもしれない。

 閣僚らの反発は、来年度予算の概算要求基準の骨子に、当初、社会保障費などを除く政策的経費の「一律10%削減」を盛り込もうとしてわき起こった。

 「ポスト菅」の有力候補とされる前原誠司国交相(48)は、今年度予算で公共事業費の1兆3000億円削減を達成したことを強調して、「公共事業を含めて1割削減するのは納得しかねる」と猛反発。

 口蹄疫対策で注目される山田正彦農水相(68)は「農業の戸別所得補償制度を本格実施するには、それなりの予算が必要だ」とクギを刺し、直嶋正行経産相(64)も「新成長戦略をしっかりできるようなルールにしなければ」と言い放った。

 菅首相は“経済オンチ”と揶揄(やゆ)された財務相時代、明治維新の立役者の1人、勝海舟の曾孫・勝栄二郎主計局長らから経済政策について細かくレクチャーを受けた。この功績からか、勝氏は菅内閣発足後、事務次官への昇格が内定している。

 このため、「いくら国家財政が厳しいとはいえ、政策のメリハリもつけずに『一律10%削減』とは、あまりにも財務省的な発想だ。菅首相野田佳彦財務相(53)とともに、財務省の軍門に下った」(民主党ベテラン)との見方が。

 批判を避けるためか、20日に決定した概算要求基準の骨子には「一律10%削減」は盛り込まれなかったが、まだ、菅首相や野田氏はあきらめていないという。

 政治主導の予算編成を行う目玉組織として、昨年夏の政権交代後に設置された国家戦略室の役割縮小にも批判が続出している。

 鳩山由紀夫前首相(63)は22日、BS番組で「国家戦略局(への格上げ)は国民への約束。簡単に外してほしくない」と批判。桜井充参院政策審議会長(54)も、「われわれに何の相談もなかった。(国家戦略室は)政治主導のシンボルだった」と不満を表明している。

 さらに、松井孝治政調副会長(50)は官邸に菅首相を訪ね、「首相、官房長官財務相政調会長で(予算の)編成をするなら自民党内閣と一緒だ」と抗議。前原氏も「(機能縮小によって)一体、どこが政治主導でやっていくのかという疑問が閣内にいる私でさえ浮かんでくる」と言い放った。

 鳩山内閣が官僚のサポートを十分受けられずに失敗したため、菅首相には「官僚を使いこなす」という意識が強いとされる。だが、ミイラ取りがミイラになり、「官僚主導」「財務省主導」を復活させつつあるのか。

 経済評論家の荻原博子氏は「菅内閣が何を主軸にして予算編成しているのかが見えない。菅首相は『強い経済と、強い財政と、強い社会保障』などと語っているが、サッパリ分からない。現在、霞が関では、民主党マニフェストで掲げた『子ども』と『環境』『IT』『社会保障』が予算分捕りのキーワードとなっている。これでは『官僚の思うまま内閣』ではないのか」と語る。

 とはいえ、9月の代表選を見据え、菅首相を批判するこれらの閣僚や有力議員が本気で「菅降ろし」に打って出る気配は現時点ではない。

 菅氏に近い中堅議員も、「首相就任からまだ1カ月半。9月の代表選時でも3カ月。ここで首相交代となれば、日本は5代続けて短命首相になり、国際的信用を失う」と、菅降ろしを牽制するのだが…。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100723/plt1007231640004-n2.htm